心の映画三選

友達と映画の話になった。
その人は映画もけっこう見てたらしい。
「じゃあ、心に残った映画三選と銘打つなら、何を推す?」
という俺の問いに、
「三つかよ! うあ、選べきれない……」
といったふうに、困った様子だった。
俺、複雑な心境。
映画はあまり見ない人だからか、三つ選べと言われても、とっさに出てくるのはひとつかふたつ……三つ埋まらないんですけど?


で、それからちょっと考えて、心に残っている映画をかき集めてみました。
せっかくなので、記憶だけを頼りに、ちょっと書いてみようと思いました。
なぜ記憶だけなのかって、それは心に残ったものの印象を大切にしたいから――という理由でなくて、ちゃんと筋を調べてから感想を書くと、下手なことを書けない気がしたからであります。なので、下手なことを書いてるなぁ、と思っても、それは記憶のせいだと思って暖かく見守ってやってね。
その代わり、自信満万に書きます。
そしてネタバレていますんで、タイトルに引っかかるものがあったら読まないほうがいいよん。まあ、そんな新しくはないから大丈夫だとは思うけれども。


『レオン』
とりあえず、「好きな映画は?」と問われたときにはこの映画の名前を出すことにしている。
殺し屋と少女の共同生活を描いたリュック・ベッソンの名作。
クライマックス、硝煙弾雨の絶望的な篭城状態の壮絶さは、かなりのものです。僕はおとんに説教されているときに、後ろでこの映画が流れていたのですが、泣きました。マジで泣きました。たしかそのとき見たのは二回目のはずですが、泣きました。状況として最低最悪なのは言うまでもありません。しかも二回目です。二回目はなかなか感動できるものじゃないです。その中でさえ心を掴み取り、そして揺さぶった――このことからこの物語のすごさを感じてください。別に怒られたことがショックで泣いたわけじゃないです。
ちなみに、KANON(女の子がいっぱい出てくるゲームです)の真琴シナリオをやっている最中に、ばーちゃんから「ご飯冷めっちまーぞ」と呼ばれたときは、完膚なきまでに萎えました。


『仮面の男』
デュマさんという歴史的文豪が原作だとかなんだかですが、知ったこっちゃありません。『三銃士』を書いた人ですが、「ダルタニャンってなんか萌えるなぁ、名前が」というくらいの知識(?)しかありませんでしたし。
その三銃士たちは現役を引退して余生を過ごしていたけれど、なんやかんやで、時の王ルイ13世(この辺の数字とか、本気で曖昧)の双子の弟を、兄に取って代わらせようという荒唐無稽な計画に荷担することになった、というあらすじ。王様の悪政があまりにもひどかったせいですね。で、双子の弟は今はバスチーユ牢獄に幽閉されているからそれをまず救出して、礼儀作法を叩きこんで、仮面舞踏会で入れ替えよう、という作戦である。ちなみにタイトルは、幽閉されている間、顔が王のそれと同じだとわからないよう、ずっと鉄仮面を被せられていたからつけられたものですね。
そして、これもやっぱりクライマックスです。
結局計画は失敗。再び牢獄に入れられた弟を助け出す三銃士だが、ルイ率いる銃士隊に包囲される。袋小路に追い詰められ、唯一の出口には銃を構えた数十人の銃士たち。
この絶望的状況で、彼らはあえて真っ向から突き進むのです――。
すごいです。
「彼ら(現役の銃士たち)は我々の伝説を知っている。付け入れるのなら、そこだ」とか言って特攻をかけるのですが、あてになるものじゃありません。
影から通路に踊り出て、帽子を投げ捨て、剣を振り上げ一気に走り出すその姿は、今思い出してもアツさで視界がにじみます(ホントに)。
その勇姿に、ルイの「撃て!」という号令にも関わらず、誰も動けません。業を煮やしたルイが自ら銃を撃ち、そして他の銃士たちも撃つのですが、全員が目を閉じ、銃口をそらします。辺りに立ち込める白い硝煙が晴れたとき、そこには無事に立つ漢たちの姿が。もはや誰もルイの言葉を聞く者はいません。なし崩し的にその場でルイが捕らえられて、弟が被っていた鉄仮面をつけられてしまうのですが、そんなドサクサ感が気にならないほどの勢いが、そのシーンにはたしかにありました。


『マルコビッチの穴』
さて、だんだんと記憶も怪しくなってきましたよ(笑)
俳優のマルコビッチの中に入りこめる穴、というアイディアが根幹にある話。筋はもうほとんど覚えてない(爆)
ただ、そのマルコビッチの穴の中には47人くらいの人間が住んでいて、マルコビッチの見聞きしたものを内側から鑑賞しているという感じだった。で、主人公は人形遣いで、マルコビッチを内側から操っていって――という感じだったような。
途中でマルコビッチがその穴の存在に気づいて、「俺の中に入るな!」とか叫びながら穴の前でもみ合っているうちに、マルコビッチ自身がその穴に入ってしまった、という展開があった。
そこは、マルコビッチの世界。
茶店の店員も、客も、自分もマルコビッチ。みんなの言語はマルコビッチ語。とにかくすべてがマルコビッチ――
まあ、そのシュールさだけがとにかく印象に残ってますね。うぃ。


『スリーピーホロウ』
呪術と迷信に満ちた世界に科学の光が当たり始めた、前世紀のニューヨークが舞台。主人公は、首なし騎士が現れるという村スリーピーホロウに赴き、その謎を科学的に解明しようとするが……という話。だと思う。たしか。
すごいおもしろかったのはなんとなく覚えているんだけど……いや、ごめんなさい、この作品ではなくて、印象に残っているのは『レジェンド・オブ・スリーピーホロウ』という映画。
最初は気づかなかったんです。
いや、正確には、最後まで気づかなかったのかも。
見終わって、ビデオテープをよく見てみて、「……あれ? この、『スリーピーホロウ』の前に小さく書いてある『レジェンド・オブ・』って……」と思うまで、気づけなかった。
気づいても、信じたくなかった。
俺が見ようと思った映画とは、違うものだった、なんて。
でも、信じるしかなかったのです。
だって、すげえつまんなかったし(笑)
まあ、話のあらすじは同じなのかもしれないっすよ。首なし騎士が現れるから、それを調査しに主人公(たしか名前も本家と同じ)がスリーピーホロウに向かう、ってところは。
まあ、同じなのはそこまでだけど……。
この主人公がしょうもない男で、ビビりのくせに女にだけは手は早い。そんな根性なしに村長の娘を取られた村人が、腹いせに首なし騎士に化けて主人公を驚かす。主人公はビビってそのまま村から逃げ出してしまいましたとさ、というオチ。
エンドロールが出てきて、俺のほうがビビりましたよ。
あれ?
CMとかで見た、首なし騎士が漆黒の馬を駆り疾走するシーンは?
黒々と、陰鬱とした病的な雰囲気は?
つーか首なし騎士の謎の正体って、村人のいたずら?
最低でも、「本当は首なし騎士は実在していて、主人公をビビらせた村人が惨殺される」というくらいの展開はあるだろうな、と思ったのに――終わりかよ!


本家があったことには安心したけど……。
そのせいで、心に残ったのは『レジェンド・オブ・スリーピーホロウ』のほうになってしまいました……。


以上。
いやぁ、映画って、本当にいいもんですね!

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