東京ヴァンパイア・ファイナンス

上に同じく、電撃新人賞銀賞の話。同じく銀賞の『ロウきゅーぶ』のほうは、カバーしてても通勤中に読むのは気合がいりそうなので、とりあえずはこっちから。


超低金利の090金融「ヴァンパイア・ファイナンス」から彼を借りた、送り狼をしたい青年、振り込め詐欺グループに復習を誓った老人たち、性転換手術を願う美女、情報屋のスイーツ会合を楽しみにする違法ドラッグデザイナー、それぞれの群像劇。
描くモチーフは、石田衣良の話みたいな感じすね。どの利用者も、なにかしらの形で社会の闇の部分に触れている。ただ、それぞれ「オオカミ男」「ゾンビ」「フランケンシュタイン」「魔女」と古典的な怪物のイメージを加味してあるのがおもしろい。怪物を現代社会で再解釈するという切り口で、これからも続編はいけるだろうし。
ただ、それぞれのエピソードが微妙にかみ合っていないのが惜しいところ……というか、からめあわせるってものすごい労力な感じもするけど。でも、群像にするのなら、もっとオーバーラップさせて絡ませたほうがおもしろかったのではないかと思ってしまう。名作ゲーム『街』のように。これなら各自の話を時間軸どおりに挿入する今の形式より、短編連作にしたほうがスッキリするというもの。
あと、各人の抱える問題を解決したあとの、まとめ的なエピソードも、どうもまとめきれていないというか。どうも、消化不良感。
と、残念なところもいくつかあったけれど、おもしろかった。こういうクライムサスペンスとでもいうか、犯罪をテーマにした話って隙かもしれない。

しかし上記『パララバ』にもいえることですが、別にラノベで出さなくてもよさそうな話ですね。ヴァンパイアといってますが、超人的能力があるわけでなく。その他の人たちもしかり。電撃も、大人向けレーベルとして「メディアワークス文庫」というのを予定しているようだし、そういうのを意識しているのやもしれぬですな。