学園カゲキ!

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

ガガガ大賞の金賞受賞作。
過激な学園ではなくて、歌劇な学園の話。スターやアイドルの卵たちが集まる学校になんとなく入ってしまった普通の少年を中心にめぐる、ラブコメですな。学校の中で普通にドラマの撮影があったり、学園生活が全国中継されるような学校の中で、普通である主人公がもまれていきます。
まあ、間違ってはいまい。
ただ……これは、感想を言うだけでもネタバレになる気がするんですが……というか、以下、超ネタバレで行きますので間違って見ちゃっても文句は受け付けませんよ?


悪趣味だなぁ。
途中までは、恐ろしく普通の学園ラブコメだったわけです。学校の設定が特殊で変な人も多いけど、はて、なにゆえこれで金賞か、と思ったほどでしたが。
途中で、ヒロインが事故に遭います。まあ、これも「いやいやいくらなんでもプレゼント楽しみで横断歩道で立ち止まって開けてる最中に事故るとかないだろ」とか思わなくもないですが、まあ、割愛。
怪我自体はたいしたことはなかったのっですが、彼女は頭を打ったせいで半身不随となり歩くこともままならなくなった。陸上選手としての才能もあったのに、それもなくなり、しかも家が貧しく奨学金で学校に通っていたために在学自体が危ぶまれる状態に。
ただし、ひとつだけ彼女が学園生活を続けられる手段がある、と担任は告げます。彼女の事故を、彼女が主演しているドラマの脚本にもリンクさせて、「リハビリをこなす健気な陸上少女」という役になることで、ドラマを継続。そうすれば奨学金も継続、治療費も学園が負担してくれるどころか、役者としてギャラも入る、といいます。
が、主人公は絶望に伏すヒロインが、世間の見世物となってこれ以上傷つくのが耐えられない、そんなことをいうお前ら最低だ、と激昂します。
が、担任はいいます。「君らが足を踏み入れたのは、そういう世界だ。売れるためだったら何だってする。話題になるのなら、どんなことだってやるのさ!」
結局、ヒロイン自身が、担任の提案を受け入れるわけですが。
ヒロインが半身不随になって、それを国富すするとかは、逆に新鮮だなぁ、とか思って読んでたんですが。
終盤直前。
すべて、嘘だったことが明かされるわけです。
ヒロインは本当は足が動かなかったわけではない。
それどころか、主人公との出会いも、今までの出来事も、すべて学校側が仕組んでいたことだ、と明かされるのです。
もとは、未来の芸能人ばかりが集まるこの学校を世間にわかりやすく伝えるために、何も知らない新入生を追跡する――その企画の中心にいたのが、主人公だったのです。(早い話『トゥルーマンズ・ショー』ですね)
主人公の家にはテレビがなく、学園に対する予備知識も学園で撮影されているドラマも見たことがなかったから、というのがその理由ですが。


いやでも、それってどうよ?
部屋にも隠しカメラや盗聴機が設置されてるんだぜ?
担任が言ったように、「売れるためにはなんでもする世界」だとしても、本人の預かり知らぬところで自分の行動を観察されつづけて、人間関係や出来事まで操作されているってのは――かなり悪趣味じゃない?(しかもその企画が世間では大人気で高視聴率がとれている、ということにも薄ら寒さを感じる)

まあ、結局、すべてをぶちまけてしまったヒロインを守るために、自らその役を勤め上げ、感動のフィナーレを演じることですべてを丸く収めます。
収めますが……。
エピローグが、ちょっと、気になるんですよね。
そこでは一転、普通の家庭にシーンが移ります。主人公とヒロインのクライマックスを見て、感動する一家。しかし、仕事から帰ってきたばかりで冷めてるお父さん。お父さんは思います。「そういえば、この企画、ヤラセ疑惑があったよな、根拠は無知のはずのこの少年が実は卓越した演技力を持ってるからだ、とか……」
まあ、たしかにそのエピソードはあります。ひょんなことから別のドラマに「先輩に告白する役」で出ることになったときに、本当は先輩に断られるという筋書きだったのにあまりの演技力に流されて先輩が告白を受けてしまう、という。まあ、これはこれでおもしろかったんですが。
でも、それ以降、主人公の演技力に関するエピソードが、何もないんですよね。
あー。
これは、俺の深読みかもしれないけど。
実は、主人公はすべて知っていて、それでもなお無知を演じていたのではないか、と……。


主人公、けっこういいやつなんですよ。
特にこれといって特徴もないんですが、にじみ出る人のよさがある。
しかしそれが実はすべて演技だと思ったら……
うあぁ。
悪趣味だ。


まあ、深読みというか、もはや勝手な憶測なんですがね……。


しかし、ガガガ。
トガってるなぁ。