マルドゥック・スクランブル 3(ネタバレ)

ふと、ブラックジャックのシーンを読み返してみた。
自分の運命を切り開くために、なんとしても合計400万ドルをカジノでせしめないといけない主人公の少女・バロットと、彼女のパートナーである万物に変化するネズミ・ウフコック。それまでは周囲を精密に感覚する主人公の能力と、圧倒的な戦略、そしてパートナーのネズミとの信頼関係で勝利を続け、100万ドルまでは手に入れた。が、そこに現れた、カジノ側の切り札の男、アシュレイ・ハーヴェスト。運をしきりに口にする彼がカードを配るようになってから、すべてのゲームが引き分けに終わってしまう。一ドルも奪われてはいないが、手にしてもいない。不気味な沈黙が続く中、徐々に、バロットたちが負け始めていく。
はたして、彼はいかなる手を使ってカードを支配しているのか?
この男を打ち砕く手段はあるのだろうか?


と、展開していくのだけど、初読のときはぶっちゃけ何のことだかわからなかったのです。なんかとてつもないことが起こっているらしいのだけど、具体的にどういう仕組みでそうなってるのかなんやこら。
けど、二回目だった今回は、ようやくわかった気がします。まあ、半分くらいまでは。
ドクターが後ろで、人間の脳が右脳と左脳にわかれたことによって未来の近似を予測できる理論を淡々と語り始める辺り――これが反撃ののろしなんだけど、実は彼の言葉がすべてを物語っているのかもしれない。
ウフコックが左脳――デジタル――流動型知能となり、バロットが右脳――アナログ――結晶型知能となり、二人でひとつの強力な脳として機能し、アシュレイという鉄壁に穴をあけるため奮闘する。
が、アシュレイの戦法も、実はバロットたちの関係の組み合わせと似たような根拠――偶然と必然の組み合わせから現れたものだった……と思うのだけど、なんかこの辺がやっぱりまだわからん。
それにしても、駆け引きの濃度がすごい。
ドクターの理論、アシュレイからの左手の指摘、ヒッチハイクの例え話、ウフコックの手袋を外すこと、バロットの成長、直感と統計の融合、人は偶然しゃべっている、アシュレイの過去。
すべて、勝負に直接関係する要因ではないけれど、それらが間接的に絡み合って、勝負のテンションを限界まで上げまくっている。


ああ。
こんなシーンを書いてる人がいる様子が、なんだか想像もつきませんね。