『なつき☆フルスイング』

今期の電撃小説賞の銀賞受賞作。
ケツバット(説明するまでもないけれど、バットで人の尻を思いっきりかっ飛ばす所作。主に罰ゲームなどに使用する)で夢魔を払うヒロインとそれに巻きこまれた元野球少年の話。
一抹の不安を抱えながら読んだけれど(タイトルの☆とか)、いや、思ったより普通によかった。
銀賞ということで粗みたいなのがいくつかあったけれど。文章の意味がとりづらいところとか、伏線なしとか(ついでに言えば文章の記述とイラストが食い違っていると感じたところもいくつかあった)。でも、よかった。夢とかなんとか叫んでますぜ。青臭いといったらなんだけど――そう、こういうのが青春ってやつでしょう。


まあ。
個人的には、『バイバイララバイ』を思い出してしまうんですけどね!
同じモチーフなのだから当然といえば当然なのでしょうけど、なんかかぶりまくっている。特に第2稿のほうですね。
夢にまつわる話なこと。ヒロインと主人公が協力して夢魔を払うこと。短編連作っぽい作りなこと。野球少年の挫折が絡んでいること。ヒロインが実は……なこと。
もちろん、比べるべくもなくこちらのほうが精錬されています。当たり前だ。二次落ちと銀賞。そもそも比べることさえおこがましい。
そもそも夢がモチーフな時点で野球少年が出てくるのは、ある意味自然な流れ。俺がババライ第二稿で野球少年のエピソードを第一章にしたのは、甲子園を目指す球児というのが夢を追いかける高校生のもっともポピュラーな姿だと思ったから。で、この作者はその野球少年を主人公にしたわけです。野球といえばバット――ケツバット。
そこでケツバットで人を助けるという、荒唐無稽なアイディアが出てきたんじゃないかな、と予想。
まあ、知りませんが。


けど逆に言えば、ババライの完成形に近いようなものなんじゃないか、とも思うんですよ。そう思うと、なんすかね。去年は『火はまたのぼる』という作品をもとに精錬した作品がやはり銀賞に輝いたわけですが、なんかやっぱり、歯がゆいものを感じますね。
まあ。
とりあえず俺は今の自分の作品の完成度だけを気にすればいいのかな、と思いつつ。


次は大賞作。期待は膨らみすぎて、逆に不安……。