河童のクゥと夏休み

河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]

河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]

およそ二年前。本屋に勤めていたときに、先輩の姉さんに「あんた、これでなんか宣伝文句考えてや」といわれたのが、この映画でした。
この河童をかたどったポップ(立て札みたいなもの)に、なんかしらセリフを入れろというお達しでした。
最初は「くわっぱ!」とか超テキトーなセリフを入れてみましたが、何しろ誰も本作品を知らないので「この子、こんなセリフ言うんやなー」と誰も突っ込みません。
あまりにもテキトーすぎるので、そこは自主的に取り下げて、適切なセリフを見つけるためにネットで調べてみました。映画? お金払ってまで見ようとしませんでしたが、何か?
パッと見、河童と少年の友情を描いたハートフル(?)な作品に見えます。
まあ、実際はそういうところが狙いなんでしょうけど……中盤辺りから、河童の存在が世間にばれてマスコミが家に詰めかけたり、テレビに無理やり出演させられたり、家族がメディアに餌食になり始めるという妙に重い展開に……。
当時は、「うあー」と思ったのを記憶してます。
まあ、こういう類の話でマスコミの餌食とかリアルな困難が待ち受けている――というのは斬新ではありましたが、だからってあんまり見たいという気にもならず。そのまま忘れていたわけですが。
ちなみにセリフは「おれと友達になってくれ!」という無難なセリフに落ち着きました。(このセリフも別に劇中でいっていたわけではないけれど)


が、先日深夜にやることを知りまして、見てみようと思ったわけです。
深夜(朝?)三時から。
翌日に予定があったから徹夜はできないので、三時に目覚ましかけて。ある意味、徹夜するより大変な方法を駆使し、見てみました。
別に何を期待したわけでもないですが。
どうも、あの本屋のときの因縁というか。なんかわだかまりが自分の中に残っていたのですね。
結局テキトーなセリフを書いてしまった悔いなのかもしれませんけど。


で、内容。
河童と少年の友情……なのかなぁ?
前に読んだあらすじのとおり、
起:河童と少年が出会う。
承:少年、河童のために仲間を探す。
転:マスコミにばれてメディアの餌食になる。
結:結末。
という構成になってるのは間違いないのですが。
メディアの餌食になったのは河童と飼い犬だけで、家族は特に被害はないような。
特に少年にいたっては、不安がる河童をよそに、テレビ出演することに浮かれまくりでしたし……
友情というのなら、むしろ飼い犬と河童の間に感じましたね。
家族の飼っている犬(名前はオッサン)と河童はテレパシーで話せて、なにかと河童のことを気遣ってくれていました。テレビに出演するときも河童を気遣い、家族についていきます。テレビ出演中に河童は、共演した河童研究者が持っていた河童の腕がサムライに殺された自分の父親の腕だと気づき、力を暴走させてしまうのですが、呆然とする家族をよそにひとり、オッサンは河童を背中に乗せて逃げ出します。「どこか人間のいない静かなところにいきたい」という河童の願いを聞き入れ、都会を走り抜けます。
が、この時点で河童は有名人(?)です。どこへいっても注目を浴び、カメラを構えた人間に追いかけられる。やがて疲弊しきったオッサンは、出会い頭にやってきた車をよけることができず、衝突。死んでしまいます。
おぉぉ……
オッサアアアアン!
まあ、ここが俺にとってのクライマックスでした。
このあと家族がその現場に追いつき、冷たくなったオッサンを前に悲嘆します。が、河童が東京タワーの上に居ると知ると、全員で移動。
誰かオッサンのそばについていてあげて!
この直前にオッサンの亡がらがカラスに食われそうになる描写があったので、なおのこと心配です。ちなみにこのあと、オッサンは写真でしか出てきません。どうなったんでしょうか。五体満足でおうちまで帰れたんでしょうか。
オッサン……。


なんだろ。
河童と少年の一夏の友情物語、でなく。
河童と犬の、身勝手な人間たちからの逃避行、という印象です。
天国の扉をノッキングしていただきたい。


まあ。とりあえず。
今、あの河童のポップにセリフを書くのなら、
「くわっぱ!」
かなぁ。一周まわって。