ゴーストシップ

ゴーストシップ 特別版 [DVD]

ゴーストシップ 特別版 [DVD]

なにやら、テレビ朝日50周年記念で映画も豪華なラインナップが放送を控えているらしい。
パイレーツオブカリビアン デッドマンズチェスト」
「MI:3」
「ダイハード3」
そして今夜放送するのは――「ゴーストシップ


……知らねぇ。


ビッグタイトルであおっておいてのこの落差。しかし、俺が知らないだけで実は隠れた名作なのかもしれない。だってほら、50周年が近いんでしょ? ならきっとこれも、先に紹介された作品に劣らぬものがあるはず!


話としては、40年前、航海中に失踪した豪華客船をサルベージすることになったチームの話。しかしその船で次々と奇怪なことが起こり……という内容。
まあ、ホラーですな。
冒頭、客船のホールで踊る人々の中をワイヤーが飛んでいくシーンからスタート。全員、下半身と上半身が切断されてしまいます。俺、ちょっと期待。これはなかなかいいんじゃないか?
きっと船に乗り込んだメンバーが次から次へと、残虐な殺され方をしていくに違いない!
わくわく。
そして30分経過――


誰も死なない。


スリリングなシーンといえば、ひとりが腐っていた床から落ちかけたくらいか。
一通り船の中を見回して、リーダーが「それじゃ作業は世が明けてから始めよう」と言うのだけど。
まさか無事に夜を明かすとは思わなかった……。
途中、40年前の船なのにデジタル時計が落ちていたり、グラスに酒が注いであったり、女の子の姿が見えたり、謎っぽい伏線はちりばめられているのだけど。まだ新しい死体がたくさん見つかったり、はじめは普通の食料に見えた缶詰の中身がいきなり無数の蛆虫になったり、ショッキングなシーンもあるのだけど。
誰も、死なない。
結局最初に死んだのは、一時間経過したくらいだろうか。
しかもその死因は、幽霊パワーでプロパンボンベの栓が緩められ、それと気づかぬままエンジンを点火、爆発。メカニックが焼死。
それってどうなん?
いや。知らないうちにガス栓が開かれたりしたらこわいけどさ。でもさ。なんか、ちがくない? もっと、なんか、あるじゃん。刺激的な殺害方法が。ガス栓緩ませるだけなら生きてる人間にだってできるんだし。もっと幽霊らしい、なんか別の方法があるのではないかと――
そう思っていたら、残りのメンバーの殺害方法も五十歩百歩でした……。
幽霊たちの武器は、幻覚とちょっとしたポルターガイストのみのよう。
裸のねーちゃんの姿で窓際に立って、その気になって抱きしめようとした男を転落させたり。
他のメンバーの姿を幽霊だと誤認させて、自分に襲い掛かってくるように思わせて、逆に反撃させようとしたり(同士討ち狙いですね)。
なんていうか、違うんじゃね?
そういうことじゃないんじゃない?
案外幽霊ってできること少ないのはわかるんだけど、でも、別にそんなにリアルにしなくたっていいじゃん。もっと派手にやってくれよ!


極めつけは、黒幕の言葉。
「この船いっぱいに魂を集めて、地獄のサタンに献上するのだ」


サタン!


俺は恐ろしい悪魔の首領よりも、よく腹痛を起こす世界チャンピオンのほうをイメージしてしまいます。
あー。若かりしころは俺もよく天使だ悪魔だと安易にネタに使っていたけど、この映画もそういう感じなのかなー。そーか、サタンの使いの策略だったのか。うん。それならしょうがない。
テレビ朝日も、ビッグタイトル放映するためにちょっとお金使いすぎちゃったのかもね。


唯一よかったのは40年前の虐殺シーンの回想かなぁ。アップテンポなBGMにあわせてどんどん人が殺されていく。ダンスホールでワイヤーしかり。料理に劇薬を混ぜたり、プールに人を並べて撃ち殺したり、少女を拉致って部屋に連れ込んだり。その間、セリフもないのでかなりテンポがよかった。
テンポって大切だね、と思った初冬の夜でした。
とりあえずガスの元栓はちゃんと確認して寝ようっと。