『神様のメモ帳2』

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈2〉 (電撃文庫)

うーん。
杉井さんの作品の本姓は、悲劇的カタストロフィではなくて、この煮え切らない主人公像なのではないか、と思ってしまったり。
例えば俺はこの話を説明するときに「池袋ウエストゲートパークみたいな感じ」と説明するのですが、もっとも大きな違いはその主人公像かもしれないですね。あっちは、バイタリティあふれるトラブルシューター。周囲の協力は得るも、あくまで解決するのは彼自身の力によるところが大きい。いってみりゃヒーローです。でもこっちは自己嫌悪と無力感にさいなまれるいち高校生。
もしかしたら、その「無力さ」が読者にとって身近なものに感じて、楽しめるって人がいるのかもしれないけれど。リアルすぎて同類嫌悪みたいなものにならないかなぁ。前の巻ではそれでも最後に彼は自分の身を危険にさらして事件を解決に向かわせたのですが、この話ではそういう意味での犠牲を払っていない。最終的に事件の解決のきっかけになったのは主人公のアイディアだったけど、それでも実行したのは他の人たちだし。
なんというか。「僕らと同じ。だけど、僕らにできないことをできる」というのが、情けない系の主人公のいちばんいい具合なのかもしれないですね。ここでいう「できない」っていうのは、「やろうと思えばできるけれど、覚悟や思いが足りないがゆえに、やろうと思えない」ということ。この方向性で今でも印象に残るのは、『イリヤの空』の中盤で主人公が自分の耳の下をえぐりとったシーンなんですね。誰でもやろうと思えば、カッターで自分の耳の下に埋め込まれた発信機をえぐりだすことはできる。特別な技術も、天賦の才能も、天才的な発想も必要ないから。ただ、ものすげえ根性だけが必要なだけで。
神メモの一巻には、そういうのがあったのですが。
今回はそうでもなかった印象。
読んでいってどんどん気持ちが曇っていく……クライマックスも、主人公がそんな感じなので不完全燃焼気味。うーん、残念。
まあ、メオはかわいかったですが。