『13階段』

13階段 (講談社文庫)

13階段 (講談社文庫)

仕事先のリーダーからもらった本。
なんとなく名前と映画化されたのは知っていたのだけど、特に読もうと思ってなかった話でした。
冤罪の余地があるまま死刑に処されそうになっている受刑者を助けようと奔走する、刑務官と『傷害致死』で仮出所中の青年の話ですね。
強盗殺人の疑いをかけられて処刑されそうになっている受刑者を助けるわけですが、ほとんどすべての証拠が彼の犯行だと裏付けています。彼はバイク事故で倒れているところを見つかるのですが、彼の服には被害者の血がついていて被害者のものであるキャッシュカードも所持していました。しかし、彼は事件当時の記憶を事故のショックで失ってしまっていた――と。彼が絞首台にかけられるのは時間の問題。唯一の手がかりは、最近になってようやく思い出した「階段を上った」という記憶のみ。多額の報酬で彼の冤罪を晴らそうとする匿名の依頼者に応じた刑務官は、その事件のあった日に補導された過去を持つ青年に因縁めいたものを感じ、彼を助手として調査をすることになった――と。
リーダーは「死刑制度について考えさせられるでぇ」と言っていたけど、むしろミステリとしてのおもしろさに普通に楽しませてもらいましたね。
たくさんの謎があり、それが明かされるたびに状況ががらりと変貌するのです。冤罪だとしたら数々の証拠はなぜあったのか、階段とはどこのことか、匿名の依頼者とは誰か、そして真犯人は誰なのか。
着々と死刑への手続きが行われていくなか(13段階ある)、果たして、いかにして彼の冤罪を晴らすことができるのか。そしてどんな結末が待ち受けているのか。




また、さすがに最後まで読んだら死刑制度――というか法制度についても考えることがでてきますね。
事件を追う二人の主人公――刑務官と仮釈放中の青年。二人とも、事情は違いますが人を殺しています。刑務官のほうは、職務として。死刑を二回執行した。青年のほうは、傷害致死。状況からすれば仕方がないことで、相手を殺してしまった。それで親は困窮するほどの多額の賠償金を支払い、また出所後も前科者として後ろ指を差されるようになってしまった。
そして、冤罪で処刑されようとしている人間がいること。
この司法に関わる問題は、最後まで複雑に関わりあっていくわけでして……。
特に、ほとんど受刑者の視点から語られることがなかったということも興味深かったですね。死刑を受ける当事者は、翻弄されるだけ。すべては、自分の知らないところで起こっている――刑の手続きも、真相究明も。
と。
かなり暗くて重く、読後も素っきりするような話じゃないですが、おもしろかったです。


しかし、なんですね。伏線って、マジであからさまでもいいんですね(苦笑)。