必殺料理

締め切りに追われると、作品とは関係ないところで奇跡が起こるらしく。
またひとつ、必殺料理を生み出してしまいました。
サルモネ丼、地雷原スパゲッティに続く第三の必殺料理。
その名を、薬カレー。


作り方は簡単。
まず普通の手順でカレーを作ります。
つまり、野菜や肉を切って煮込むわけです。
そのあと市販のカレールーを突っ込めば、なんのてらいもないカレーができるわけですが。
ここで、隠し味を投入します。
チョコレートとコーヒーです。
意外に思われる人もいるかもしれませんが、これらはわりとオーソドックスなカレーの隠し味です。適切な分量をいれれば、カレーの味がマイルドになるのです。
が、それだけでは必ず殺すと書いて必殺料理にはなりません。
もうひとつ、重要な要素を叩きこむのです。
それは、勘違い
隠し味を目分量で勘違いすればOK。愛情が最高の調味料なら、きっと勘違いはその対極にある概念ですね。しかもチョコレートはカカオ86%。従来のチョコに比べてかなり苦いです。せめてもの救いは、カカオ99%のほうが値段が張ったことでしょうか。店頭でこっちに妥協しました。
あとはどす黒くなった煮汁を無視してカレールーを投入しましょう。
薬味のカレーのできあがりです。


苦いです。
子供なら泣きます。
一口目はカレーなのですが、すぐにぴりぴりとした苦味が舌の上に広がります。二口目がどうしても運べません。良薬口に苦しといいますが、残念ながらこれは主食です
なにがつらいって、鍋いっぱいにできたこの薬味のカレーです。
これをあと数日食べつづけるのかと思うだけで、日々がそのまま苦行と化します。幸か不幸か防腐剤代わりに酢とか入れてみました。あまり腐らないんじゃないかと思います。腐ってもない食べ物(こんな味のものを食べ物と定義するかは別の問題として)を捨てるのは道義的に許されないことなので、食べるしかありません。
そう。
薬カレーは精神攻撃なのです。


サルモネ丼が内部攻撃。地雷原スパが物理攻撃。なんてうまいこと役割がわかれていることでしょう。そのまま小説のネタに使えますね。


そういえばコーヒーもチョコレートも昔は薬として重宝されていたんだったな、と思いつつ。
ああ。
普通に作った赤だしが超絶うまい


……もし今月末の短編賞がモノになったら、受賞コメントは「精神を追い詰めることで不可能を可能にできました!」と決まりましたね……あはは……。