『BREAK/THROUGH たとえあなたがエヴァに乗らなくても』

というわけで、作品感想。
海燕さんの同人誌ですな。
人気書評ブログ「something orenge」の管理人、海燕さんの同人誌。一応知り合いなので、ブログもだいたい読んでるので、買ってみました。
実はしばらく前に読んだやつだけど、おもしろかった。
同人誌といっても中身は書評。ちょろっとだけエヴァの二次創作の形をとっている。エヴァ三号機のパイロットとして選ばれた架空の少年に、命を賭してエヴァに乗ってもらうように頼む話で、過去の物語を語ることで心変わりするように促す、というもの。でも実質的にはオリジナル。基本的には10編の書評から構成されます。
文脈をもって書評を展開することで、ひとつの効果を生み出すってできるんですね。
同一テーマを持った作品を紹介して行くことで「○○で描かれたテーマはこの××で昇華されている」と、山と谷ができてきて、その流れがおもしろい。これを書評小説という人もいたけど、言いえて妙ですね。たしかに、この流れは物語だ。
最後の第10章ではちょっと感動すら覚える。ふと冷静に思うと、この感動の過半数は紹介していたノベルゲーム「SWAN SONG」の感動なんじゃないかと思うけど(この章に至っては引用がかなり多いし)。でもその魅力を抽出した著者の技量とセンスによるところも多いか。(ちなみにSWAN SONGは未プレイ)

1000円(送料別)だけど、満足の内容でした。
後半のひとつのテーマに向かって畳み掛けて行く展開もよかったが、個人的には第一章がよかった。格闘漫画の変遷から『最強』というあくなき夢を目指す男の生き様を語り、プラネテスに至ってただ遠くの星を目指す愚かにすら見えるほど純粋な思いを語って、その集大成として紹介したのがエロゲ『どんちゃんがきゅ〜』という落差になんかもう笑った。
いや、この語りが本当なら、めちゃくちゃアツい話みたいなんですけどね、『どんちゃんがきゅ〜』。でも、『どんちゃんがきゅ〜』ですよ。誰がそんな話だと思いますか。公式サイトの作品紹介を見てみたら、「えっちなことされるとすぐ「きゅ〜」となっちゃうウブな女の子どんちゃんを、きゅ〜っとさせないようにえっちなことをしよう」みたいな話だけど……でも、パッケージとは裏腹に本質の物語は愛と夢の葛藤を描くすさまじいものがあるらしく。あれかな。『ネギま』をただのショタ×パンチラマンガだと思い込んでいたけど、読んでみたらかなりアツいバトルマンガ(バトル以外にもいろいろあるけど)だった、みたいなことだろうか。『ロウきゅーぶ』がただのロリっ娘満載ラノベだと思っていたら、その実アツいスポ根だった、という感じか。タイトルや公式サイトからは想像もできないけど。


ところで嫁は海燕さんの未完の小説(幻獣狩り)を読んで、主人公の死んだ兄の日記をたいそう気に入ったようで。異能力を手にしてだんだん狂っていく兄ががある日「僕は童貞を捨てた。女と寝たのだ」とか言い出したあたりで、中学二年生のように反応してました。日記はその後数日分で終わり、結局主人公が誰と寝たのか謎のまま途絶えてしまい、海燕さんの執筆までも終わってしまったのですが。
で、話の続きとかは別にいいけど、主人公が誰と寝たのかだけが知りたいらしいです。ゴシップ的に。消去法なら叔母かなと思うけど、そんな消去法でわかるこのをわざわざ謎にはしまい、とも思うし。
そんなわけで、わかる人教えてください(えー)。