コスプレ管理人

うちの父親は高校教諭をやっています。
ふと昨日、「明日は学習館の鍵当番だ」という話になりました。多分冗談だったと思うんですが、「お前代わりにに行くか?」と言われました。
おとんの学校は、俺の母校でもあるわけです。
一応、勝手は知ってます。
まあ、いろいろあって、行くことになりました。
なぜか学生服を着て。


なぜ学生服か?
母校の鍵の管理をする→おもしろい。
制服を着て母校に行く→おもしろい。
制服を着た人がなぜか管理人してる→おもしろい。
ナマ女子高生を見れる→俺うれしい。
卒業生がひょんなことから制服を着て母校に忍び込み、女の子に見初められる逆シンデレラな話を思いつく→夢がドリーミング。
懸命な読者諸君なら、この説明だけでわかるだろう。
そう、俺はそういうノリの男だ!


さすがに朝、学生服を着た俺を見て両親は苦い顔をしましたが。
遅いよ遅い。
ふたつの意味で遅い。
俺の制服管理人のイメージを止めるのも遅ければ、
息子が大学で阿呆になってしまったことに気づくのも遅い。


そんなこんなで、5年ぶりに制服登校です。数字って、素で痛いですね。
ようするに、受験生のために自習スペースを開放しているので、そこを朝に開けて夕方に閉め、赤本とかの貸し出しやコピー機の使用を見守ったりするのが仕事です。
その間は、自由。
お話書こうとパソコン持ち込んでみたりしましたが、進路相談室が管理人室を兼ねているので、そういう関係の資料がいっぱいあるわけです。つい、「小説家になるには」とか「13歳のハローワーク」とか読んでしまったりしてみました。
へー。
前者は、ほとんど精神論でしたね。そもそも小説家なんてなるためのノウハウなんてあってないようなものだし。古い本なので、基本的なことの確認ばかりでした。「ああ、俺は文章なんか気にせずに速度を活かそう」と思ったくらい。
自分がやめたくてもやめられないような仕事をしましょう、ということでした。
「医者からでも新聞記者からでもホームレスからでも、本当になろうと思えば作家にはなれる。その逆はあまりない。作家は最後に選ぶべき職業」
村上龍はいいことを言うなぁ。


まあ、そんなことはともかく、女子高生はすばらしいです。
こんな年の暮れまで勉強しにくるような子なのに、スカートはミニです。杉井師父からの教えにありました、「キャラの意外性は印象の時間差」そんな若い太ももがまぶしいです。落とした紙を拾うだけで危なっかしいです。その思考がすでにおっさんですが、気にしません。なんか現役当時も同じようなこと考えてた気がするし……。


で、ばれました。
「何の先生ですか?」だって。
「えー。やっぱりわかるの? 学生じゃないって」
「いやー、同期にはいない顔だから。誰だろうなー、ってみんなで話してたんですよ」
同学年の顔、全員覚えてるのか……。すごいなおい。一応、8クラスあるはずだけど。
今思えば、「二年ですよ、先輩☆」とか言えばごまかせたのかもしれないけど――や、無理か。うん。無理だ。星とかがもう無理だ。
「やっぱり学校に行くからって、制服着たんですか?」
「いや、せっかく行くんだから若いときの思い出に浸ろうかなって」
「……え? それってコスプレ……」
引いてました。
うーむ、引くのか……。
あー。
まあ、そうか。
コスプレで学校に紛れ込むとか、そりゃ引くよなー。
気づいた途端、恥ずかしくなってきました。うひー。顔が熱い〜。


まあ、ちゃんとやりとげましたが。
女子高生とも話せたし、満足。
帰りがけに「お疲れ様でしたー」とか言われて、「ああ、みんなにばれてるのね」と思ったけど、満足です。
これで制服を着て母校に忍び込む話が書けます。
別に忍び込まなくたって書けた気がするけど。